院長だより

臨床試験(MONACO trial)の論文掲載。

ここ数年とりかかっていた臨床研究がひと段落しましたのでご報告させていただきます。

もともとは大阪大学循環器内科で取り組んでいた、心不全患者さんの登録研究(PURSUIT-HFpEF registry)の解析結果をもとにしたアイデアがきっかけで進めることとなった臨床研究でした。

左室ポンプ機能の保たれている心不全患者さん(HFpEF)の登録研究でしたが、私はこのデータを解析し、右室機能が患者さんの予後を大きく分けることを2020年に報告しました。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCIMAGING.120.011430

この報告結果をもとに、予後の悪いことが予測される右室機能の低下した心不全患者さんへの治療法を模索することを目指し、ピモベンダンという内服薬が有効かどうかを検証する臨床研究を企画しました。

ピモベンダンは、強心薬と分類される心不全治療薬で、原則として左室ポンプ機能が損なわれている患者さん(HFrEF)に使用されることのある薬でしたが、利用場面がかなり限られなかなかつかみどころのない薬でもありました。

ピモベンダンは、薬理作用的には心筋の収縮力をあげるだけでなく、肺血管を拡げる作用も有していることが知られていたので、右心室の負担(後負荷)を下げながらその収縮力をあげることで、右室機能が損なわれた患者さんの治療の一手にはならないかと考えました。

ピモベンダンそっくりで薬効のないプラセボ薬を用意し、患者さんも処方医もどちらが投薬されているかわからないようにして、実薬の効果を検証しています(二重盲検法)。

こういった試験薬を投薬して効果を検証する試験は、患者さんにご参加いただくにもハードルが高く、大阪大学だけでなく関連医療機関の多くの先生方にご協力いただき進めることができました。

残念ながら試験の主結果としては有効性を示すことはできませんでしたが、HFpEFの患者さんがいかに治療することの難しい病態にあるのかということがわかり、治療を押し進めるうえでの多くのヒントを得ることができました。
またこういった臨床試験を企画遂行することの難しさを、大学の研究グループ全体で経験できたことも、大きな財産になったと思います。

この試験結果は2025年3月の日本循環器学会学術総会で報告させてもらいました。
https://shoushoukai.com/2025/04/04/790/

また、先日大阪大学循環器内科同窓会では優秀研究賞として表彰いただきました。
https://shoushoukai.com/2026/07/08/1028/

2025年3月の学会発表で報告させていただいた頃から、論文としてまとめ科学雑誌に投稿していましたが、先日日本循環器学会の主雑誌となるCirculation Journalに採択いただき掲載されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/advpub/0/advpub_CJ-26-0152/_html/-char/en

またこの論文はジャーナルクラブオンライン(JCO)で取り上げていただき、報告内容をディスカッションした座談会がYoutube配信されています。
https://www.j-circ.or.jp/topics/cj%e3%83%bbcrx%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%bc%e3%83%8a%e3%83%ab%e3%82%af%e3%83%a9%e3%83%96%e3%82%aa%e3%83%b3%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3jco%e3%80%80%e7%ac%ac11%e5%bc%be%e3%82%b3%e3%83%a9%e3%83%9c/

患者さんの登録は前職勤務中に完了していたのですが、その後の解析、学会発表準備や論文作成は医院での診療にあたりながら進めていましたので、論文が採択されるまでの一通りの作業を終えることができ、ほっと一安心しています。

多くの先生方、患者さんのご協力に感謝しつつ、こういった難しい疾患に対してもしっかり対応していけるよう、日々の知識の整理、診療への落とし込みを丁寧に続けていきたいと思います。